2012年12月28日金曜日

マリオ・ガルシア・トレス


退屈な光はギャラリーの寓意?

ライアン・ガンダー&ジョナサン・モンク


ライアン・ガンダーとジョナサン・モンクの二人展『“They came out of nowhere” he said, pointing to nowhere.』へ。

大理石で作られた幽霊のライアン・ガンダーの彫刻作品、「Tell my mother not to worry」がとても可愛らしく欲しくなってしまいました。子供が幽霊のフリをして遊んでいる様子をモチーフにした作品だそうです。

幽霊という掴みどころのないイメージと、大理石という強固な物質の組み合わせも面白いです。




アートと音楽@東京都現代美術館


プールに浮かぶ白磁がぶつかりあい偶然性の音楽を奏でるセレスト・ブルシエ=ムジュノや、立つ位置によって音のランドスケープが変化するフロリアン・ヘッカー、ジョン・ケージの4分33秒を発展させたマノン・デ・ブールの作品など、ジョン・ケージへのリスペクトが感じられる作品が展覧会の基調をなしていました。

マノン・デ・ブールの《二度の4分33秒》は強い風雨の音が外で聞こえる中、4分33秒を演奏するピアニストの映像と、環境音が消され二度目の4分33秒が演奏される映像で構成されています。一度目で聞こえていた強い風雨の音が消されたこともあって、二度目では映像を見ている自分の周りで聞こえる音に、より注意が向くようになっていました。

こういった作品の一方で、植物の危険信号や木の年輪など、自然にあるものを音に変換していく作品もあり、音と視覚の関係を様々な角度から考られる展覧会でした。

2012年12月19日水曜日

ゲルハルト・リヒター@Wako Works of Art


ストライプの作品の前に立ってみると、強烈に視線が撹乱されます。間隔をあけてガラスが並んでいる作品は、立つ位置によって複雑なかたちでまわりの環境を映しだします。

Wako Works of Artでは開廊20周年記念として来年2月にジョーン・ジョナス、3月にリュック・タイマンス、9月にヴォルフガング・ティルマンスの展覧会を予定しているそうです。

とても楽しみです。

美術にぶるっ!@東京国立近代美術館


保坂健二朗さんのトーク「新しくなった『MOMATコレクション』について、建築の観点から」に合わせて行ってきました。

トークの時間になるまで、東京国立近代美術館が設立されてから60年の間に集められた第一部のコレクションと、設立された時期に制作された1950年代の作品を集めた第二部実験場を鑑賞。

途中に田中功起さんの作品『一つのプロジェクト、七つの箱と行為、美術館にて』がありました。東京都現代美術館で開催中の『風が吹けば桶屋が儲かる』にも参加されており、来年はヴェネツィア・ビエンナーレの日本館でも展示されます。


今年、建築家の西澤徹夫さんとの協働で所蔵品ギャラリーを改築、展示室のサインを服部一成さんが担当されたそうです。また、リニューアルに際して「休憩コーナー」の名称を、映画『眺めのいい部屋』からとって「眺めのよい部屋」と変更したそうです。

トークでは美術館をまわりながら改築部分を説明しつつ、松本竣介、小茂田青樹、フランシス・ベーコンの作品を解説されていました。


2012年11月5日月曜日

アントニー・ゴームリー彫刻プロジェクト

神奈川県立近代美術館の葉山館に設置された2体の彫刻『TWO TIMES』を記念して、アントニー・ゴームリーの講演会があるということで聞きに行ってきました。

講演では、雪に倒れて人型の凹みを作り、それを写真に収めた作品『Snowfall』について、なにかの表象ではなくインデックスであると言っていたのが印象的でした。それは実際の出来事が解釈なしに記録されていくということであり、だれかの身体が存在しうる場所の可能性でもあるそうです。

また、同時開催している桑山忠明展も合わせてみてきました。桑山さんは2010年に名古屋市美術館、2011年に金沢21世紀美術館と国立国際美術館で個展をされていましたがどれも見る機会がなかったので、今回見ることができて良かったです。

アントニー・ゴームリーの彫刻は、美術館の脇の階段を通り、上を見上げると屋上に立っているのが目に入ります。



階段を降りて散策していると海に向かって佇むもう一体の彫刻がありました。


美術館の敷地からの眺めです。とても綺麗でした。

BIGレクチャー@早稲田大学理工学部63号館

デンマークの首都コペンハーゲン出身の建築家、ビャルケ・インゲルスのレクチャーへ。場所は早稲田大学理工学部、63号館を探すのに少し迷いました。


席はほとんど埋まっており、レクチャーもスピード感がありました。レクチャー前の紹介で、建築界のロックスターという紹介をされていたのもなんとなくわかる気がします。上海万博の際、デンマーク館のためにコペンハーゲンの象徴である人魚姫像を移動させたプロジェクトは面白いです。

レクチャー終わり、『BIG RECENT PROJECT』にサインしてもらいました。

GA galleryで開催されているビャルケ・インゲルス展にも後日行きましたが、こちらは『YES IS MORE』の日本語訳を壁に展示しただけの寂しいもので、展覧会する意味があるのだろうかと思ってしまいました。模型を一個くらいは見たかったですが、GA galleryとしてはレクチャーのほうがメインだったのかもしれません。

関係無いですがコペンハーゲンといえばバイオメガ社の自転車。


乗ってみたい。

2012年10月2日火曜日

ライアン・マッギンレー

2つのギャラリーで開催されたライアン・マッギンレーの展覧会を滑りこみで観てきました。

清澄での「Reach Out, I'm Right Here」で展示されていた作品は、エネルギーあふれる構図で撮影された大自然で裸の若者が自由を謳歌するロマンチックな写真。

ヒカリエでの「Animals」は裸のモデルと動物がカラフルな背景の前で戯れる写真。こちらも構図が面白い。「Animals」についてライアンはこう言っています。
「撮影セットの中でモデルが動物と打ち解けていく過程には、人間同士でのコミュニュケーションではめったに見ることのできない感情の真実が見えた。人間の方が、まるで動物たちがよじ登るための小道具のように見えて、とても面白かった」
小型ヤギの飄々とした表情がなんともいえません。この作品で確か70万円台、買えないけど欲しい・・・

マッギンレーはニューヨークから車で30分の郊外、ニュージャージー州ラムジー生まれ。8人兄弟の末っ子で、兄5人、姉2人の家庭で育ったそうです。自由でエネルギーに満ち溢れたライアンの作品には尊敬していた兄の存在が影響しているのかもしれません。
「兄はエイズで亡くなったんだ。僕がいちばん慕っていた兄で、ドラァグクイーンだったんだけど、小さな頃から彼のニューヨークのアパートに入り浸っていた。AZT(HIV治療薬)が今のように簡単に手に入らなかった頃で、それは、壮絶な死だった。僕はだから兄の分まで、自由で、爆発的で、エキサイティングな人生を生きて、たくさんの人に出会い、馬鹿げたアイディアを実行して、そのすべてを写真に撮って、世界中の人に見てもらいたい。だから、悲しみやみじめさはいらない。僕の写真の世界に、みじめな若者や孤独な若者はいないんだ。」

2012年9月24日月曜日

Le Penseur

François-Auguste-René Rodin "Le Penseur"

Keith Tyson "The Thinker (after Rodin)"

Ryan Gander "Everything is learned, VI"


2012年9月22日土曜日

2012年8月29日水曜日

SO-ILトーク@広島市現代美術館


ドイツから帰国し、翌日は建築家SO-ILのトークがあるということで、ス・ドホの個展が開催中の広島市現代美術館へ行って来ました。ス・ドホの作品《ブループリント》の下でのトークというワクワクするような演出でした。

SO-ILは2008年からニューヨークで活動をはじめたオランダ出身の男性Florian Idenburgと中国出身の女性Jing Liuのユニットで、2010年にMoMA PS1の若手建築家賞を受賞し、2011年にフリーズ・アートフェア・ニューヨーク会場を設計。Florian IdenburgはSANAAのもとで働いていた経験があり、ニューヨークのNew Museumを主に担当したそうです。

トークでは、オスカー・シュレンマーのPole Danceからインスピレーションを得たPS1での仮設建築Pole Dance、中国で開催されたイベントGet It Louderでのパビリオン、ソウルのKukje Art Center、バーレーンのコンペ、ニューヨークのLogan社オフィスの5つのプロジェクトを語っていました。

Pole Danceに来た人たちが思い思いに遊ぶ様子は、状況を作り出す建築として興味深いものでした。また曖昧性という考えを大切にしており、いろいろな場所へ移動したり世界の変化のスピードに適応させていくことと、いろんな人といろんな場所で仕事をする上で一番最初から全てを提示せず、オープンにすることで多くの人々が関われるようにするために曖昧性を手段として用いているということだそうです。

SO-ILの建築は使用されるファブリックが特徴的で、独特な素材の使い方をしていて、Kukje Art Centerはクリストを想起させます。ファブリックの使用はス・ドホとも関連するところですね。

帰りにス・ドホの展示を観る。《墜落星 1/5スケール》や《アメリカ合衆国ニューヨーク州10011 ニューヨーク市348西22番通り - アパートA、廊下と階段》は思わず見入ってしまうような精巧な作りでした。

2012年8月26日日曜日

フランクフルトのギャラリーめぐり

フランクフルト現代美術館で写真展とErik van Lieshout展、MMK ZollamtでMauricio Guillén展を観たあと、シルン美術館でMichael Riedelの個展とJeff Koonsのペインティングの展示へ。

フランクフルトで活動する作家Michael Riedelの、テキストと図像を使ったグラフィックデザインのような作品がカッコいい。

そして、すぐ近くのFrankfurter Kunstvereinで絵画のグループ展を観る。

ホテルへの帰り道にフェリックス・ルファーとジェイコブ・シュトゥルムによって設立された非営利施設Basis Frankfurtに寄りました。

ホテルへ一旦戻ったあと、川を超えてDeutsches Architektur Museumでスタディ模型の展覧会。ハンス・ホラインによるフランクフルト現代美術館のスタディ模型もありました。オーディトリアムではGabu Heindl & Drehli Robnikの建築模型が出てくる映画のシーンばかりを集めた映像作品「Mock-Ups in Close-Up:Architectural Models in Film 1927-2010」が上映されていました。

最後にLiebieghausでシルン美術館と同時開催のJeff Koons展を。こちらは彫刻だけを集めて展示しています。

一日かけて駆け足で観たのでなかなか疲れました。

dOCUMENTA(13)

夏休みを利用して、5年に1度開催されるdOCUMENTA(13)を観にドイツのカッセルへ行って来ました。トリノのカステッロ・ディ・リヴォリ現代美術館のチーフ・キュレーターをしていたキャロライン・クリストフ=バカルギエフが今回のディレクター。
主会場の一番最初の展示空間、ライアン・ガンダーの作品です。部屋の気圧が変えてあり、強い風が入り口から吹き込んでくるという作品。なにも展示しないというコンセプトを作品化するというのはイヴ・クラインの虚無展など今までにもあったと思いますが、気圧の変化によって風を吹かせるという間接的な手法はさすがライアン・ガンダーです。

カールスアウエ公園にあるピエール・ユイグの作品。女性裸体像の顔面に巨大な蜂の巣がこびりついており、一つの生態系を作り出しています。蜂がまわりを飛び交っていて、遠巻きにしか見ることができず、鑑賞者はまさにdOCUMENTA(13)のテーマの一つである「退却」をするしかありません。

また、今回はじめてティノ・セーガルの作品が体験できたのも良かったです。ティノ・セーガルは自分の作品をドキュメンテーションせず、作品の売買時にも記録を一切残さない作家。

暗闇のなかで数人のパフォーマーに、ケチャのようなダンスでまわりを取り囲まれました。暗闇に入りたての段階では周りが全く見えず、感覚が研ぎ澄まされる中でのパフォーマンスはやはり迫力がありました。クライマックスで瞬間的に電気を点けたり消したりする演出もかっこよかったです。他にもいろんなバリエーションがあり、ずっとこの場にいたくなる。長く暗闇にいると目が慣れてきて、ぼやっと人影がわかるようになります。

他にもオマー・ファストやジェラルド・バーンなど、興味深い作品などもありました。

町の中の図書館で展示されていたマティアス・ファルドバッケンの作品。駅や図書館など、社会的に機能している施設での展示というのも特徴的でした。

dOCUMENTA(13)を印象づけるロゴはデザイナー集団Leftloftによるもので、dは小文字、13はカッコで囲む、文字は黒、フォントは自由というルールで統一されているそうです。なんだかインストラクション・アートみたい。僕はショップでロゴの書いてあるマグカップを買いました。

2012年8月14日火曜日

カルペ・ディエム@豊田市美術館


お盆の法要を終え、豊田市美術館のカルペ・ディエム展へ。

カルペ・ディエム展は、古代ローマ時代の詩人ホラティウスの「カルペ・ディエム(その日を摘め)」という言葉を軸に、花をモチーフとした作品を主に集めた企画展。豊田市美術館のコレクションを使うと同時に新作も多く、 良質な展覧会でした。 

特に印象に残ったのは、福田美蘭さんの装飾性とポップが合わさった新作、花のパターンにディズニーのキャラクターが隠れる《眠れる森の美女・オーロラ姫》《魔女マレフィセント》と、渡辺豪さんのデジタルアニメーション《それになるためにそれを摘むこと》です。渡辺さんの作品は、暗闇から花の鋭い輪郭が浮かび上がり、花びらが徐々に枯れていき、終わりの方では抽象的な形になって画面下に溜まり一本の線になって消えるというもの。暗闇に映しだされる形態の、微かにゆっくりと変化していく様子を凝視する鑑賞体験は、不思議な身体感覚をもたらします。


渡辺さんの作品はエスパス ルイ・ヴィトン東京でのコズミック・トラベラーズ展でも見たのですが、そのときよりも強い印象を受けました。コズミック・トラベラーズは原口典之さんの作品のインパクトが強かったからというのもあるかもしれません。

また、常設特別展の小沢剛さんの展示、《あなたが誰かを好きなように、誰もが誰かを好き》では子供たちが布団の山から転がり落ちていて、とても楽しそうでした。