2012年8月29日水曜日

SO-ILトーク@広島市現代美術館


ドイツから帰国し、翌日は建築家SO-ILのトークがあるということで、ス・ドホの個展が開催中の広島市現代美術館へ行って来ました。ス・ドホの作品《ブループリント》の下でのトークというワクワクするような演出でした。

SO-ILは2008年からニューヨークで活動をはじめたオランダ出身の男性Florian Idenburgと中国出身の女性Jing Liuのユニットで、2010年にMoMA PS1の若手建築家賞を受賞し、2011年にフリーズ・アートフェア・ニューヨーク会場を設計。Florian IdenburgはSANAAのもとで働いていた経験があり、ニューヨークのNew Museumを主に担当したそうです。

トークでは、オスカー・シュレンマーのPole Danceからインスピレーションを得たPS1での仮設建築Pole Dance、中国で開催されたイベントGet It Louderでのパビリオン、ソウルのKukje Art Center、バーレーンのコンペ、ニューヨークのLogan社オフィスの5つのプロジェクトを語っていました。

Pole Danceに来た人たちが思い思いに遊ぶ様子は、状況を作り出す建築として興味深いものでした。また曖昧性という考えを大切にしており、いろいろな場所へ移動したり世界の変化のスピードに適応させていくことと、いろんな人といろんな場所で仕事をする上で一番最初から全てを提示せず、オープンにすることで多くの人々が関われるようにするために曖昧性を手段として用いているということだそうです。

SO-ILの建築は使用されるファブリックが特徴的で、独特な素材の使い方をしていて、Kukje Art Centerはクリストを想起させます。ファブリックの使用はス・ドホとも関連するところですね。

帰りにス・ドホの展示を観る。《墜落星 1/5スケール》や《アメリカ合衆国ニューヨーク州10011 ニューヨーク市348西22番通り - アパートA、廊下と階段》は思わず見入ってしまうような精巧な作りでした。

2012年8月26日日曜日

フランクフルトのギャラリーめぐり

フランクフルト現代美術館で写真展とErik van Lieshout展、MMK ZollamtでMauricio Guillén展を観たあと、シルン美術館でMichael Riedelの個展とJeff Koonsのペインティングの展示へ。

フランクフルトで活動する作家Michael Riedelの、テキストと図像を使ったグラフィックデザインのような作品がカッコいい。

そして、すぐ近くのFrankfurter Kunstvereinで絵画のグループ展を観る。

ホテルへの帰り道にフェリックス・ルファーとジェイコブ・シュトゥルムによって設立された非営利施設Basis Frankfurtに寄りました。

ホテルへ一旦戻ったあと、川を超えてDeutsches Architektur Museumでスタディ模型の展覧会。ハンス・ホラインによるフランクフルト現代美術館のスタディ模型もありました。オーディトリアムではGabu Heindl & Drehli Robnikの建築模型が出てくる映画のシーンばかりを集めた映像作品「Mock-Ups in Close-Up:Architectural Models in Film 1927-2010」が上映されていました。

最後にLiebieghausでシルン美術館と同時開催のJeff Koons展を。こちらは彫刻だけを集めて展示しています。

一日かけて駆け足で観たのでなかなか疲れました。

dOCUMENTA(13)

夏休みを利用して、5年に1度開催されるdOCUMENTA(13)を観にドイツのカッセルへ行って来ました。トリノのカステッロ・ディ・リヴォリ現代美術館のチーフ・キュレーターをしていたキャロライン・クリストフ=バカルギエフが今回のディレクター。
主会場の一番最初の展示空間、ライアン・ガンダーの作品です。部屋の気圧が変えてあり、強い風が入り口から吹き込んでくるという作品。なにも展示しないというコンセプトを作品化するというのはイヴ・クラインの虚無展など今までにもあったと思いますが、気圧の変化によって風を吹かせるという間接的な手法はさすがライアン・ガンダーです。

カールスアウエ公園にあるピエール・ユイグの作品。女性裸体像の顔面に巨大な蜂の巣がこびりついており、一つの生態系を作り出しています。蜂がまわりを飛び交っていて、遠巻きにしか見ることができず、鑑賞者はまさにdOCUMENTA(13)のテーマの一つである「退却」をするしかありません。

また、今回はじめてティノ・セーガルの作品が体験できたのも良かったです。ティノ・セーガルは自分の作品をドキュメンテーションせず、作品の売買時にも記録を一切残さない作家。

暗闇のなかで数人のパフォーマーに、ケチャのようなダンスでまわりを取り囲まれました。暗闇に入りたての段階では周りが全く見えず、感覚が研ぎ澄まされる中でのパフォーマンスはやはり迫力がありました。クライマックスで瞬間的に電気を点けたり消したりする演出もかっこよかったです。他にもいろんなバリエーションがあり、ずっとこの場にいたくなる。長く暗闇にいると目が慣れてきて、ぼやっと人影がわかるようになります。

他にもオマー・ファストやジェラルド・バーンなど、興味深い作品などもありました。

町の中の図書館で展示されていたマティアス・ファルドバッケンの作品。駅や図書館など、社会的に機能している施設での展示というのも特徴的でした。

dOCUMENTA(13)を印象づけるロゴはデザイナー集団Leftloftによるもので、dは小文字、13はカッコで囲む、文字は黒、フォントは自由というルールで統一されているそうです。なんだかインストラクション・アートみたい。僕はショップでロゴの書いてあるマグカップを買いました。

2012年8月14日火曜日

カルペ・ディエム@豊田市美術館


お盆の法要を終え、豊田市美術館のカルペ・ディエム展へ。

カルペ・ディエム展は、古代ローマ時代の詩人ホラティウスの「カルペ・ディエム(その日を摘め)」という言葉を軸に、花をモチーフとした作品を主に集めた企画展。豊田市美術館のコレクションを使うと同時に新作も多く、 良質な展覧会でした。 

特に印象に残ったのは、福田美蘭さんの装飾性とポップが合わさった新作、花のパターンにディズニーのキャラクターが隠れる《眠れる森の美女・オーロラ姫》《魔女マレフィセント》と、渡辺豪さんのデジタルアニメーション《それになるためにそれを摘むこと》です。渡辺さんの作品は、暗闇から花の鋭い輪郭が浮かび上がり、花びらが徐々に枯れていき、終わりの方では抽象的な形になって画面下に溜まり一本の線になって消えるというもの。暗闇に映しだされる形態の、微かにゆっくりと変化していく様子を凝視する鑑賞体験は、不思議な身体感覚をもたらします。


渡辺さんの作品はエスパス ルイ・ヴィトン東京でのコズミック・トラベラーズ展でも見たのですが、そのときよりも強い印象を受けました。コズミック・トラベラーズは原口典之さんの作品のインパクトが強かったからというのもあるかもしれません。

また、常設特別展の小沢剛さんの展示、《あなたが誰かを好きなように、誰もが誰かを好き》では子供たちが布団の山から転がり落ちていて、とても楽しそうでした。